卒業生へのインタビュー
「データ分析を通して、何を明らかにしたいのかを見極めることが大事。そうした目的があって、データ分析は達成のための手段だと思います。」
日本総合研究所でシンクタンク・コンサルティング業務に従事されている、関西学院大学経済学部卒業生の福田彩乃さんにインタビューしてきました。
日本総合研究所は、国内の名だたる大企業や自治体の戦略立案に携わる、日本有数のコンサルティング会社です。
そんな日本総合研究所で、福田さんはどのような仕事をされているのか、データをどのように扱っているのか。
今回は福田さんのインタビューを通して、日本総合研究所の仕事内容とデータ分析、データを使う上で欠かせない考え方と、データ分析を学ぶ環境としての関西学院大学経済学部の魅力について語っていただきました。
関西学院大学経済学部2013年卒
福田彩乃さん
2013年 関西学院大学 経済学部卒業。在学中は栗田ゼミで開発経済学を専攻。
大学卒業後は、大学院へ進学し、JAグループのシンクタンクで調査・研究活動に従事。2020年から株式会社日本総合研究所の創発戦略センターに所属。
本日はよろしくお願いします! 福田さんは日本総合研究所に勤められているとのことですが、会社の詳しい仕事内容を教えていただけないでしょうか?
ご質問ありがとうございます!
事業内容をご説明させていただきますと、色々な分野のリサーチ・課題分析を行いながら政策提言を行っています。政策提言というのは、国や自治体といった政策決定者に対して、その時々で必要だと考えられる施策をご提案することですね。
またコンサルティング業務として、民間企業の戦略立案から実行のご支援まで行っています。
ありがとうございます。福田さん自身はどのようなお仕事をされているのでしょうか?
私が所属しているのは、創発戦略センターという部署です。社会課題を思考し、政策提言するシンクタンクとしての機能に加え、新しい事業やマーケットの創出まで実行する”ドゥ・タンク”として、「thinkからdoまで」を一貫して活動しているところに特徴があります。
支援だけでなく、実際に実行まで一貫して行うんですね。一般的なシンクタンクのイメージと少し違います。
そうですよね、一般的なシンクタンクでは統計データ等を元に、世の中の課題や動向をレポートにしてまとめ、発信する業務が中心です。
ただ私たちはそれに加えて、現場で実際に住民の方々と必要とされているサービスや仕組みを考え、自治体、民間企業、研究者の方々と、グループを組んでサービスや商品の開発に取り組んでいます。
なるほど…福田さんはどの分野に取り組んでいるのですか?
私は農業分野ですね。
農業ですか?具体的にどのような内容になるのでしょうか?
直近では、農業用ロボットの開発に取り組んでいました!
本を書いたり、シンポジウムを開催させていただきながら、我々が独自に考えるサービスや機能、構想について発表させていただきました。その後、賛同くださった農家の方々、自治体、民間企業、研究者の方々と一緒に具体的化していきます。
農業用ロボット…予想外であまりイメージがつかないです。農機というとトラクターなど、大きいイメージですが…。
そうなんですよね、実際、スマート農業(※ロボットやITを活用して、省力化や生産向上をを推進する次世代の農業)が始まった当初は特定の用途に特化していたり、大きな機械が中心でした。
ただ、特定の用途に特化していると、利用するのは1年のうち数回、なんてこともあるので、農薬散布や運搬、肥料やりなど、複数の作業に使うことのできるロボットが必要だと考えました。また、1台で何役もの機能を果たすことができれば、その分、中小規模の農家の方にかかる費用負担も小さくなるのではないかと考え、小型自律多機能ロボットを提言しました。具体化に向けて、農家さんと一緒に朝5時から畑でデータ収集を行ったりもしました。
最近では新たに、一人一台、スマート農機を持つのではなく、地域でシェアしながら利用することができないかと考えていて、奈良県などで梅や柿の生産者さん、ITベンダーさん、梅や柿を加工して販売する事業者さんと新たにグループを組んで、導入検証やモデル構築に取り組んでいます。
なるほど…どのようなことに取り組まれているのかイメージできました!
仕事の中でデータを活用するときについて教えていただきたいです!
はい、農業の分野でお話しますね。
今のプロジェクトでは、収穫した農産物を運搬するためのロボットを、より多くの農家さんに利用していただく為、どういう順番で使えば良いか、各畑で何台必要なのかを知りたいと考えています。そこで作業記録、降水量、積算温度、画像などのデータを取得し、畑ごとの収穫時期と収穫量の分析を試みています。こうした分析の結果を基に、最適なスマート農機の運用を考えているところです。
その他、農業分野では病虫害診断なども実施されています。
もともと、農業は色々な仕事の中で、もっともデータ活用が遅れている分野の一つで、勘や経験に基づいて営まれてきました。ただ、そういった農業の分野においても近年ではデータ活用の機会が増えてきています。
データがどんどん農業の可能性を広げてくれそうで、聞いているだけでワクワクします…
本当にその通りですね。
また私は、コンサルティングやシンクタンクの業務で、アンケートを取得してデータを分析したり、統計データを解析したりなど、現場のデータ以外にも触れる機会が多いです。
そうなんですね!
こういったデータ活用で大事な考え方って、どのようなものなのでしょうか?
データを活用してどんなことを明らかにしたいのか、あるいは説明したいのかを見極めることが重要ですね。データは、何かしらの目的を達成するための手段だと思っています。
なるほど、どのようにデータを使っていけばいいのでしょうか?
まずはどういうことを明らかにしたくてデータを利用するのか、しっかり仮説を考えておくことが大事だと思っています。
また、分析してそれだけで終わらないようにしています。立てた仮説をもとに、分析し、そこに解釈を加えるところまでしっかりと考え抜くことが重要です。
何かの目的のためのデータ…すごく大事な考え方だと思います。
福田さんにとってのデータ分析の面白さについて教えていただけますか?
データ分析で、物事を正確に理解したり、多くの人に納得してもらえることですね。現場を見るだけだとわからないことを語ってくれたりもするので、とても面白いなと思っています。
関西学院大学経済学部にデータ分析のプログラムが新設されるそうですが、そちらの感想を教えていただけないでしょうか?
データを学べるすごくいい機会だなと思います。
データ活用を行うには分析のスキルと、分析したい分野の知識を持っていることの両方が重要です。関西学院大学経済学部には従来から、現場などで知識を知る機会が提供されていたので、そこにデータ分析のプログラムが加わると、バランス良く学べるようになりますよね。
今後テクノロジーの発展とともにデータを分析、利用していく機会が増えていきます。そしてデータ分析ができる人材はあらゆるところで求められるようになります。
現場理解とデータ分析の両方ができる環境は、データを活用して、何かしらの目的を達成する実際の仕事環境に、かなり近いのではないでしょうか。
自分がいたら利用してみたいと思うし、利用しないという選択肢はないのかなと思っています。
ありがとうございます!最後に受験生に向けて、関西学院大学経済学部のおすすめポイントを伺ってもよろしいでしょうか?
先程申したように、多種多様な分野の現場に触れられる点です。関西学院大学経済学部では、現場での活動を通してさまざまな文化や考え方を学ぶことができます。
私は在学中に色々なことに取り組みました。地域活動や、ゼミの海外フィールドワークに参加したり、バックパッカーとして一人旅したり、友達と飲み歩いたり、関心があったことには全てチャレンジできたように思います。
卒業して10年がたちますが、振り返ってみると、関西学院大学経済学部の4年間は自分の可能性を最大限広げてくれたと思っています。そして、これから入学される皆さんの可能性も間違いなく広げてくれる場所だと思います。